『住まいるブログ』~知って得する住まいの基礎知識~

住宅の購入は、人生の中でも大きな買い物です。無理に費用を抑えれば後悔する可能性もありますが、安く済むに越したことはないはず。そこで活用したいのが、国が実施している住宅ローン減税です。

ところが、令和3年12月に令和4年度税制改正大網が閣議決定され、住宅ローン減税の控除率が、これまでの1%から0.7%に引き下げられることが確実となりました。

住宅ローンの金利が0.5%を下回るほど低いので、ローンを組んだ方が一括で払うよりも実質安くなるケースが散見していたからです。

税制改正後、住宅ローン減税を利用するうえで後悔しないためには、何がどう変わったのかをしっかりと理解しておくことが大切です。そこで以下では、2022年以降の住宅ローン減税について、わかりやすく解説します。

【目次】

■住宅ローン減税とは?

住宅ローン減税とは、住宅ローンを組んだ場合に一定期間、毎年所得税などを控除してもらえる制度です。

例)
住宅購入費用:3,000万円
ローン期間:20年
控除率:0.7%
減税期間:13年間

1年目…3,000万円×0.7%=21万円
2年目…2,850万円×0.7%=199,500円

13年目…1,200万円×0.7%=84,000円

ローンは返済していくので残高は毎年減少していきます。控除率は一定なので、結果として毎年控除額は減っていく仕組みになっています。

基本的に控除は所得税額から行われますが、購入直後は残高が多いため所得税額を控除額がオーバーする場合もあります。その際は控除しきれない分を住民税額から控除してもらえます。

■これからの住宅ローン減税、ポイントは「省エネ性能」

以上が住宅ローン減税全般の基礎ですが、2022年以降の住宅ローン減税はどのようなものなのでしょうか。

まず、購入する住宅が以下の条件を満たしていることが住宅ローン減税を受けるための前提となります。

  • 所得制限…住宅購入者の所得が2,000万円以下である。
  • 床面積制限…購入する住宅の床面積が40㎡以上である。
  • 築年数要件(中古住宅)…登記簿上の建築日付で昭和57年1月1日以降の住宅である。

以上の条件を満たしたうえで、ポイントになってくるのは住宅の省エネ性能です。なぜなら2022年以降の住宅ローン減税は省エネ性能によってローンの限度額、控除期間が変動するからです。

制度で定められている省エネ性能の基準は以下の4つです。

  • 認定住宅
  • ZEH水準省エネ住宅
  • 省エネ基準適合住宅
  • 上記3つ以外の住宅

まずはこれらがどんなものなのか、説明していきましょう。

●認定住宅

認定住宅とは、主に認定長期優良住宅と認定低炭素住宅のことを指し、共に高い性能が求められます。それぞれの条件は以下です。

・認定長期優良住宅
①長期に使用するための構造及び設備を有していること。
②居住環境等への配慮を行っていること
③一定面積以上の住戸面積を有していること
④維持保全の期間、方法を定めていること

・認定低炭素住宅
①省エネルギー基準を超える省エネルギー性能を備えていること、かつ低炭素化促進のための対策が取られていること
②都市の低炭素化促進のための基本方針に照らし合わせて適切であること
③資金計画が適切であること

細かい基準は国土交通省サイト掲載のパンフレット等でご確認いただくか、展示場のスタッフに聞いてみてください。

●ZEH水準省エネ住宅

ZEH水準省エネ住宅はZEH並みの省エネ性能を有する住宅のことです。

ZEHとは「Net Zero Energy House(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)」のこと。

住宅の断熱性と省エネ性能が高く、太陽光発電などを利用して自宅でつくったエネルギーから年間のエネルギー消費量を差し引いたときに、収支がゼロ以下になる住宅を指します。

こちらについては、補助金ももらえる? ZEH ネット・ゼロ・エネルギー・ハウスとは
でも詳しく解説しているので、気になる方は併せてご覧ください。

●省エネ基準適合住宅

省エネ基準適合住宅は、現行の建築物省エネ法に適合する住宅です。

近年では新築一戸建ての9割がこの基準を満たしていると言われていますが、現時点では義務ではないので全ての新築住宅が基準に適合しているわけではありません。

ちなみに2025年度までにはすべての住宅で省エネ基準適合を義務化する見通しとなっています。

●上記3つ以外の住宅

上記3つ以外の住宅は、省エネ性能基準を満たしていない住宅扱いとなります。

確かに認定住宅等に比べれば建築コストは抑えられますが、場合によっては住宅ローン減税が受けられなくなる可能性もあります。

なぜなら、今回の税制改正大綱には、2024年以降に建築確認を受ける新築住宅などで一定の省エネ基準を満たさない場合、住宅ローン減税の適用対象外になるという記載があるからです。

そのため今から住宅取得を計画するのであれば、最初から省エネ性能基準を意識しておいても良いでしょう。

■どんな住宅が、どれくらい減税される?

先ほど、2022年以降の住宅ローン減税は省エネ性能によってローンの限度額、控除期間が変動すると書きました。ではどれくらい変動するのでしょうか。

以下に認定住宅、ZEH水準省エネ住宅、省エネ基準適合住宅、そして省エネ性能基準を満たしていない住宅、それぞれの減税内容をまとめましたので参考にしてください。

認定住宅などの場合(新築/中古)

認定住宅等 居住年 ローン限度額 控除率 控除期間
新築住宅 認定住宅 2022年・2023年 5,000万円 0.7% 13年間
2024年・2025年 500万円
ZEH水準省エネ住宅 2022年・2023年 4,500万円
2024年・2025年 3,500万円
省エネ基準適合住宅 2022年・2023年 4,000万円
2024年・2025年 3,000万円
中古住宅 上記3つ共通 2022年・2023年 3,000万円 0.7% 10年間
2024年・2025年

控除率は一律で0.7%。新築であれば控除期間は13年間、中古になると10年間に短縮されます。

ローン限度額については省エネ性能が高い方が優遇されます。これは政府が「2050年カーボンニュートラル」を提唱し、脱炭素化に力を入れているためです。つまり住宅ローン減税を活用して住宅の省エネ性能を引き上げよう、というわけです。

省エネ性能基準を満たしていない住宅の場合(新築/中古)

居住年 ローン限度額 控除率 控除期間
新築住宅 2022年・2023年 3,000万円 0.7% 13年間
2024年・2025年 2,000万円 10年間
中古住宅 2022年・2023年 2,000万円 10年間
2024年・2025年

このように、新築住宅については「より早い段階で購入され、より省エネ性能が高い住宅」ほどローン限度額が高く、控除期間も長くなっています。また、省エネ基準を満たしている住宅は借入限度額などでもさらに優遇されます。

■まとめ

減税は控除率が1%から0.7%と縮小したものの、依然として低金利が続いている現在、住宅ローン減税は購入者にとって資金面でとても頼りになる制度であることは変わりありません。

世界の環境配慮や脱炭素の流れを考えると、今後は日本でも環境に優しい住宅がより推奨され、認定住宅等がもっと増えるような制度に変わっていくことでしょう。

省エネ性能を考慮した認定住宅等は初期費用などハードルが高い面もありますが、そのぶん補助金等も充実しています。

これからの時代は、住宅購入時に計画段階で省エネ性能をシミュレーションしたり、住宅展示場で実施されている無料の個人相談に行ったりして、じっくりと「自分たちにとっての正解は何か?」を検討しましょう。

<この記事の監修者>

橋本賴幸(ハシモトヨリタカ)氏

一級建築士、ファイナンシャルプランナー(AFP)、公社)大阪府建築士会、公社)日本建築家協会近畿支部、一社)大阪府建築士事務所協会など、京都美術工芸大学特任教授。

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